東京を離れる直前、ふと立ち寄った東急百貨店で古書祭りをやっていまして、何冊か昔よく読んだ作家のまだ読んだことがない古い小説を買ってきました。なんてことのない結論も曖昧な恋愛小説だったのですが(この人、こんな恋愛小説も書く人だったんだと再発見はしたものの)、知らなかった衝撃の事実が現れました。

主人公(作家の千葉さん)は、アンカレッジ経由でパリに向かうエールフランス機に乗っています。出発する千葉さんを(成田ができる前の)羽田国際空港に見送りに来た女性は、千葉さんを愛していますが、千葉さんには別に忘れられない女性がいます。そして、千葉さんの乗った機体は羽田を飛び立ち、上昇し、シートベルトの着用が不要になりました。はい、そこで機内アナウンス。
「バンドを解いて、煙草を自由におのみ下さい。」
え・・・
え?
昔って、飛行機で煙草吸えたの・・・?まじで・・・?知らなかった・・・。本気で知らなかったです。ドラマでそんなシーンがあったじゃない?とか、他の小説にもそんなシーンなかった?と言われると、そうだったかもしれませんが、ともかく、現代になってから初めて認識しました。衝撃の事実。
あと、「煙草をのむ」という表現も、戸籍上は祖母ではない縁遠かった祖母が使っていたことを思い出しました。
あと、シートベルトは、バンドと呼ばれていたんですね。ゴムバンドっぽいものを想像してしまい、乱気流で乗客がびよんびよん伸び縮みする様子を想像して笑ってしまいました。
wikipediaによるとこの小説の出版は1966年(昭和41年)です。遠藤周作といえば、「深い河」や「沈黙」が有名です。「沈黙」は、数年前にも再映画化されました。遠藤周作を知らなくても、宇多田ヒカルのdeep riverはこの小説に触発されて(時代は随分違いますが)作られた曲だったはずですので、その世界観の片鱗を想像できる人もいるかもしれません。
遠藤周作は、キリスト教教徒です。たぶん、もともとこの本を持っていた人もそうなのでしょう。祈りの言葉や聖書から取り出したような表現が出てくるところには、鉛筆で線がひかれていました。私が遠藤周作を読んだのは、中学生の頃でした。なかでも、「王妃マリー・アントワネット」が衝撃でした。そのマリー・アントワネットが生まれた街に今居るわけですので人生ってよくわかりませんね。

話を戻すと、アンカレッジ経由、すごく憧れていました。私もいつか海外に行くんだ、アンカレッジ経由で行くんだって思っていました。父が何かを求めて向かったパリに、私もちょっと行ってみたい。見知らぬ国のビザを持ち、夜に消えていこう、という歌詞の曲が描く情景にも憧れていました。(こんなに良い曲なのにほとんど知られていないなんて。)
https://www.youtube.com/watch?v=V8Z2rMdwaBY
しかし、現実は、日本の炭素材料が飛行機を軽量化し、飛行機の燃費が向上すると同時に、ソビエト連邦が崩壊してロシア上空も飛べるようになり、アンカレッジを経由する飛行機はなくなり、大人になった私は、手荷物検査でひっかかってばかりのおっさんになりました。現実は、いつも残酷であります。

そうアンカレッジですよ。よちよち歩きの娘をつれて日本にもどる途中の小さな待合室。たまたま乗り合わせた黛敏郎にサインをもらってるうち娘を見失い青くなりました。一向に見つからない。そんな時、近くのカウンターから「ブエノスアイレス行き (?) 搭乗を終わりました」のアナウンス。もしや紛れ込んで乗っちゃんたのでは!息を呑みました。もちろん、暫くして遠くの柱の影からノコノコ出てきてご承知のように日本でおおきくなりました、とさ。
gonneko先生、今はとってもしっかり者の美しい娘さんが柱の影からノコノコ出てきた幼い頃を思うと、とてもほっこりします。ブエノスアイレスに行っちゃってたら行っちゃってたで、タンゴをマスターされていたかもしれませんね。私も、アンカレッジを体験したかったです。私がアラスカに行きたいと騒いでいたのは、半分は星野道夫のせい、半分はアンカレッジのせいです。今、調べてみると、さらにびっくり。日本からの直行便はもう存在しないようです。一度アメリカ本土に飛ばないといけないようです。あ、ウィーンから行くんでした。