コロナ検査システムの日澳での違い

濃霧のお正月でした。年越し前に、高速道路からいくつか花火が上がっているのを見たのですが、ウィーンに戻ると濃霧の中で、真上に上がっている花火すらよく見えません。そのそもこの年始は、公のイベントは全てキャンセルだし個人での花火打ち上げは禁止のはず(例年怪我人が出るので病院のキャパを守るため)ですが。

元旦は朝になっても街中はうっすら霧の中。山の方に行ってみるとこちらもまだ霧の中。樹氷をつけた草木が綺麗でした。

ところで、疑問に思っていることがあります。

なぜ日本ではコロナ抗原・PCR検査が拡充できないのか?

です。日本のニュースを見ていると「検査が受けられない」という訴えをニュースでよく見ます。こちらにいると、それが不思議で仕方ないのです。その理由を、こちらの状況を紹介して簡単に比較してみたいと思います。医療関係の専門でもないので、多々の間違いがあるだろうことをご承知ください。

1. 検査数と感染者数の日澳比較

まず、現状を示すと、以下の図は、日々のテスト数/1,000人口を示したものです。テストの実数で見ると日本が最大40,000件程度に対し、オーストリアは最大30,000件程度。これを人口比にすると、日本は非常に検査数が少ないことがわかります。オーストリアもアメリカも日本の10倍以上の規模でテストを実施しています。

日本ではごく最近まで検査数に対する陽性の比率が5%程度に維持されていました。(年末以降に10%近くに上昇)日本で陽性率が20%を超えていたのは、第一波の初期のみ。これは、限られていた検査キャパの中で濃厚接触者のリンクを追った検査がうまく回っていた証拠かとも思います。オーストリアでは、2020年11月初め頃に検査を受けた人のうち20%以上が陽性でした。この頃の検査数が、最大の30,000件程度でした。

次に、新規感染者/1Mです。日本はまだとても低いんです。これら陽性率と新規感染者数の推移だけを信じると、報道でよく見る、”熱があるのに保健所や発熱相談センターに電話しても検査が受けられない”という現象が、どこから来ているのかよくわからなくなります。余計な心配をしている人がやけくそに発熱相談センターに電話をしている可能性が一つ。他には何があるでしょうか。

今後の感染拡大と経済活動再開のバランスを考えると、医療関係者・教育関係者等、あるいは飲食業関係者・旅行に行く個人など、日本でももっと高頻度で容易に検査を受けられる必要があるはずです。それ以外の検査数の大きな差の原因を考えてみました。

2. 日本でのコロナ検査

日本でのコロナの検査には、
(1)症状や熱が出た人・濃厚接触者のための「行政検査」(行政負担)
(2)「保険診療」(保険カバー)
(3)「自費検査」(自由診療)
があるようです。ところが、海外渡航歴がなかったり濃厚接触じゃなかったりすると(1)「行政検査」にたどり着けない。しかも(2)の医療機関は、患者に症状があると断るため、(1)「行政検査」しか選択肢がなく検査希望者で溢れる。検査を受けようと保健所や発熱相談センターに電話しても繋がらない、ということが起こっているように見受けられます。また、(3)自費検査ができる検査専門機関がまだまだ限られています。

日本は医療アクセスが非常に良く風邪でもインフルエンザでも気軽に(2)保険診療を受けることができます。大抵の人は、一般の病院や内科専門医でインフルエンザ検査もしてもらいますし、血液検査が必要な場合はその場で採血して1週間後に結果を聞きに行くのが普通です。ところが今回は、一般病院が検査施設も兼ねているという点に、問題の根源があるように見えます。

症状がある場合に、医療関係者の感染拡大や院内感染を恐れた(2)一般の医療機関に拒否されてしまうわりに、(1)行政検査へのアクセスが悪く、(3)自費検査が充実していない。

3. オーストリアでのコロナ検査

一方のオーストリア。本土のサイズは、日本の北海道程度。人口885万人は、ほぼ大阪府と同じです。北海道サイズの国に大阪府民が住んでいると考えてください。ウィーンにはそのうちの189万人が暮らしています。小回りが利く小国ですが、そもそも仕組みが異なるように思います。

まず第一の違い。こちらでは、病院と検査施設が分かれています。Laborという検査施設があちこちにあり、血液検査などの医療検査を引き受けています。この分業が、日本と大きく異なる重要な点のように思います。

例えば、病院で医師が血液検査が必要と判断すると、検査項目を記したLaborへの検査依頼書を発行します。それを持ってLaborに行くと採血などの検査を受けることができ、結果もオンラインでPDFでほぼ24時間以内に得られます。検査費用は、保険でカバーされます。

さて、コロナウィルスに関わる検査ですが、私が知る限り、
(1)症状や熱が出た人・濃厚接触者・検査を受けたい人のための「行政検査」
(2)「自費検査」(自由診療だが保険適用可能)
があると思います。

日本と異なるのが(1)行政検査へのアクセスが非常に良いことです。症状がない場合でも、徒歩・ドライブスルーのテスト施設が2箇所あります。抗原検査を主にしているテスト施設では、抗原検査で陽性だとその場でPCR検査に回されます。また、症状がある場合は、まず#1450に電話をかけて問診を受けるかオンラインで症状チェックを行います。検査を勧められたら、症状がある人向けのドライブスルーのテストに行けます。こちらは1箇所でPCR検査のみです。これら全3箇所の大規模な検査施設は、ウィーン市が行なっており、無料です。

次に(2)自費検査。かなり多くのLaborがコロナのPCR検査・抗原検査を提供しています。
・PCR検査:100−150ユーロ程度。24時間以内に結果が得られます。
・抗原検査:30−50ユーロ程度。15分程度で結果が得られます。
・抗体検査(血液検査):30-50ユーロ程度。24時間以内に結果が得られます。
自国に帰国するために飛行機に乗る人、家族に会うために受けたい人、誰でも行けます。予約が必要なケースが多いですが、少なくとも翌日にはどこかのLaborに空きスロットは見つけられます。抗体テストを気軽に受けられるのも面白いです。抗体を持っていれば、無症状だったけど罹っていたらしい等ということもわかりますし、ワクチンをすぐに受ける必要があるかどうか、自分で判断が可能です。

さらにさらに、マステストがありました。202年12月の初め、幕張メッセのような場所で大規模な抗原検査が行われ、全国民に参加が呼びかけられました。街や国全体の感染傾向を把握し、無症状の人を洗い出すのに役立てる目的です。テストは、一般の医療関係者ではなく軍が担当しました。次回はウィーンでは2021年1月中旬にあります。抗原検査を受けて陰性だった人は、1週間早くロックダウンを除外、受けなければ1週間ロックダウン延期という面白い試みです。

以上のように(1)行政検査と(2)自費検査、また、PCR検査と抗原検査を目的に応じて使い分けており、1人ですでに3回受けているような方もいます。(1)行政検査も、検査自体は民間委託しているようで、(1)行政検査が充実できるのも委託できる民間機関が充実しているためにように思います。

4. 結論(かもしれないこと)

オーストリアが高い検査数を実現できている1つの要因として、医療機関と検査機関が分かれており民間の検査機関が充実していることが挙げられそうです。

逆に、日本は医療機関は充実しているものの、コロナウィルスの検査においては、発熱などの症状があると医療機関に断られ、(1)行政検査に集中。一部の地域がドライブスルー検査をしたり、病院が自費検査を提供しているようですが、人口比で圧倒的に不足。これは、検査機関が医療機関と合体している弊害なのではないでしょうか。

ただ、東京のような大都市の人口密度で考えると、オーストリア並みの検査数/人口を提供するには、大規模な検査キャパシティが必要になります。東京の検査数は、最大でも10,000件程度だったようです。しかし陽性率はかなり低いし、やっぱりよくわかりませんね。

https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

簡単にどっちが良いということはできませんが、日本にも検査だけを行う検査施設みたいなシステムが新しいビジネスとして大きくなれば、かつて医薬分業が行われたように、検査施設が分離することで専門性も高まり(コロナに関わらず)メリットがあるかも?今のような状況において、「行政検査」のキャパを増やすためにも良さそうです。

もう一つは、過度なPCR検査信仰と、過度な陰性・陽性信仰。感染初期では陰性になるのはインフルエンザ検査でも同じです。陰性の結果が、48時間後も陰性であることを保証するものではありません。迅速に結果が得られる抗原検査も空港での検査やエアラインの基準でも両方が許可されていますし、もっと迅速に結果が得られる抗原検査を増やせばいいのに。それとも、日本では検査キットの流通の問題があるのでしょうか。

それから特に地方での、陽性者への村八分のような差別。あほらしくてニュースを見て仰け反りました。実に陰湿な日本人っぽい。受けたい人がたくさんいる一方で、実は本来受けるべきなのに陽性になるのが怖くて受けていない人もいそうですね。

なんとなく感じたことを長々書きました。なぜなら新年で引きこもっているから。

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