Kungsleden Day 4 の記録。
この日が一番の思い出になった日かもしれない。

Alesjaure Fjällstugornaを出発

兼ねてから、むしろウィーンを出発する前から、この日(2024年8月24日)は嵐が通過する予報の日。Alesjaure Fjällstugornaの予では、午後はHeavy rainで夜はStormyとなっている。
他の部屋が6時台から騒がしかったのでうっすら目覚める。朝は雨時々強風の音。前夜も最後で起きたのも遅かったので結局朝9時出発となった。出発時点では小雨。この日の予定距離は20kmほどの予定。

朝ごはん中、スウェーデン人おじさま2人にどこまで行くと樹林帯になるのかを尋ねてみると、やはり目的地としているAbiskojaure Fjällstuga周辺まで行かなければならないだろうとのこと。さらに、Abiskojaure Fjällstugaに向かう湖エリアを越えると水場(流れている川)がなくなるようで、しっかり水場で水を確保していくようにアドバイスされる。このアドバイスが命拾い一つ目。
途中のBoat station
湖の向こうには5-10軒ほどの小さなロッジ風の集落が見える。ボートで来られるようになっているようだけど、こんな場所にロッジ?という感じ。2時間ほど歩いたあたりの湖畔にボート乗り場があり休憩していると、逆方向から若いフランス人男性2人組が現れた。彼らは逆方向のAbiskojaure Fjällstugaで、嵐が通過するので早く出発するようにアドバイスされ5時には出発していたらしい。これまでのところは雨は降っていたが厳しくはないとのこと。この「嵐が通過するから早く出ろ。嵐は18時ごろには通過しているので、早めにAlesjaure Fjällstugornaに到着すれば大丈夫。」と言われたという情報が命拾い二つ目。

ついでにそのフランス人たちからは、「ところで、ここからすぐのところで tons of mosquites!!」という情報ももらった。蚊嫌いの私は、さっそく虫除けネットを被って歩き出した。が、彼らが蚊の大群に出会ったらしいあたりに到達したときに雨が降り出し、結局 tons of mosquites!には出会わなかった。蚊は雨が降り出すと飛んでいられないので消えたのだと思われる。
SUPボードを持ったカップル現る
しばらく歩いていると向かい側からカップルが現れたが、その彼らのザックの外側取り付けられていたものを、2度見した。この寒空の中、彼らが持ち歩いていたのはなんと折りたたみ式のSUP(Stand up puddle)ボード。え???となって思わず声をかけてしまった。私も川で泳いでシャワー代わりにできるかと思ったが、思ったよりも寒くてそんな気には一度もならなかった。彼らがSUPボードを重しとして100km歩くのかと思うと先が慮られたけども、私の知ったことではない。幸運を祈るのみ。
最後の水場にて
最後の水の流れがある場所を地図で確認しながら雨の中を歩く。地図上ではまだあと1、2本、湖に流れ込む水の流れがあるはずだけど少し早めに一度止まって水を汲む。この時点でかなりの雨になっており、バディの靴下が濡れてしまったという。濡れた靴下のまま歩いていると容易に靴擦れを起こしてしまうので、早めに靴下の交換を進言。
嵐のためビバーク
水場の周辺で5分ほど留まっていると、そこに突然、大嵐が到達。突然かなりの風と雨が始まった。本当に突然のことだった。これは彼らが「18時にAlesjaure Fjällstugornaに到達していれば大丈夫」と言われたという嵐だ。自分たちが今いる場所で遭遇しているのはその嵐に違いない。どんなに良いレインウェアを着ていてもこの雨風ではウェアの中もびしょ濡れになってしまう。しかもこの先は地形的に避ける場所もない荒野に出てしまう。即座にビバークを決意。(地図の緑の場所がボート乗り場、赤の場所がビバーク場所)

水捌けが良い場所を走り回って探し、20mほど離れた場所に急いでテントを一つ設営する。強風に煽られながら大雨の中でのテントの設営に慌ててしまい、本来はレインフライを先につけてしまってから内側で作業をすべきだったところ手順を間違えたり手こずり、乱雑に設営してしまう。とにかく風と雨をいち早く避けねばと焦るばかり。
なんとかテントの設営を完了してテントに滑り込む。嵐の到達とともに気温も急激に低下するのを感じる。とりあえず、気持ちを落ち着けるために注意しながらテント内でお湯を沸かし小屋で買ってあったスープを飲む。この時点での時刻は多分13時過ぎ。
雨が強まり、柔らかい草地の土壌が緩くなり、テントが強風で煽られて刺したはずのテントのペグが抜ける。風で煽られるレインフライの隙間からテント内にも風と雨が吹き込む。私のMSRのテントはインナーテントのウォールにメッシュ生地が多用されており、雨も一部が吹き込んでしまう。脱いでテント内に置いていたハードシェルが雨でびしょ濡れになってしまう。
風は強弱を繰り返す。こんな嵐の中でも外を歩く人の声が一度だけ聞こえた。強者だ。

テント内で暇を持て余し、手回し充電器を回して体を動かすことで身体を温める。後から腕時計で撮ったログをみると、動いている間よりも手回し充電器を回している間の方が心拍数が上がっていることがわかる。

コーヒーを飲んだりするが、じっとしているとなかなか寒い。そこで、寝るときに使うマットとシュラフも取り出す。さらに、Nikkaluoktaで買ったPRIMSのステンレス一層ボトルが活躍する。燃料は十分にあるので水を沸かしてはボトルに入れ、それをダウンジャケットで包んで湯たんぽ代わりにして手足を温める。
5時間のビバーク後
少し雨風が治り始めたのは既に5時間ほど経っていた。時間も夕ご飯近くなっているので出発前にカレーメシを食べる。スパイシーな風味がとても良い。テントを畳み出発する。雨はほぼ小降りになっているし風も収まっている。ここから目的地とするAbiskojaure Fjällstuga近くのテン場までの距離はまだ10km近くある。

嵐が通り過ぎたトレイルは至る所が水浸し。

5時間ほどビバークしていたため、トレイルをすれ違う人はもう一人もいない。荒野を歩いているのは自分たちだけ。

そこにふとトレイルに落ちているトナカイの角を発見。持って帰りたかったが、これがとても重い。3-4kgはありそう。こんな重いものを頭に二つもつけて歩いているとは。

Mt. Kieronの麓
一応陽が沈みきらない時期なので時間は遅いが歩き続けることができる。2つの山の脇を過ぎ、丘を巻き、到達した Mt. Kieronの麓。まだ風があり風が避けられる場所を探して樹林帯まで降りる。

かなり標高を下げて目的のテン場に到着したのはもう21時を過ぎていた。

テントを設営してご飯を準備し始めた頃には、曇り空ということもあってほとんど真っ暗になっていた。
自分の数ある山行きの中で、本当にビバークしたのは初めてだった。今まで、天気予報を注意深く確認してリスクを避けに避けて山に通ってきた。でもこの長距離のトレイルでは完全に避けきることはできない。携帯は圏外で雨雲レーダーも見られない。限られた天気予報と、偶然すれ違った人から聞いた情報がうまく交差して、知識が活きて、「やばい」という経験から判断ができた。低体温にならないように身体をなんとか温める工夫。全知識を投入した気がする。
この日の移動距離は19km。

