A hieroglyph from the heavens

 

先週木曜日、午後から雪が強まりました。

割ってしまったお皿を買い直そうと、いつもと異なる路線で帰って駅を降りると・・・職場よりも降っていたようで積もった雪が踏み固められた歩道が滑ります。ヒールで歩いてる人など、誰一人としていません。そもそもヒールを履いているおっさんがいないのです。でもお皿を買いに来たのです。目的は達成したい。しかし、これで帰りに転んでまたお皿を割ってしまっては、ネタにしかなりません。流石の私もそこまでネタになるのはなんとか避けたい。慎重に慎重に10cmずつ匍匐前進で帰りました。匍匐してませんけど。

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お皿を割ったのは、お正月に小おむすびを作って家を出て、バスを降りたところで紙袋が破れて落としたからなのですが、割れることを予期していたのか、白いお皿の最後の勇姿がiPhoneの写真に残っていました。そして、何事もなかったかのように、同じお皿を買い足すことに成功しました。

翌日の金曜日も1日雪でした。夜になってもよく降り続きます。ひらひらと舞う雪を眺めていると、心が一瞬日本に戻ってしまい、スキーウェアを着込んで冬山用ザックから取り出したのは雪面観察キット。斜度系、温度計、クリスタルカード(鉄板)、6xルーペ、それに赤外線温度計や100均で買った化粧用品用のブラシ、10xルーペやノートなど独自の装備も追加したものです。

何に使うか?雪に穴(ピット)を掘って雪の層を観察するんです。ほら、境界線が見えるでしょう?この境界線が弱層となり、刺激を与えると(与えなくても自重に耐えられなくなっても)雪崩る可能性があるんです。

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今降っている雪がどんな雪なのか、どんな気象条件なのか、という情報は、数日・数週間・時には1ヶ月も後にこのような境界線を発生させる可能性のある重要な情報となります。コンスタントに同じ条件で雪が降り続いていれば話は単純ですが、気温、湿度、晴れて気温が上がって溶けたり、雨が降ったり、すごい密度で急激に積もったり、激しく吹雪いて雪が吹き飛ばされたり、吹き飛ばされた雪が吹き溜まりに溜まったり、放射冷却で表面の結晶だけが形状を変えたり、降ってくる雪も結晶性の高いものや湿度を多く含んだもの、いろいろです。また、斜度や、斜面の向き、ほんの数メートル離れたり、木の下に行くだけでもこの層の様子は変わってしまうのです。したがって、いまだ誰も、雪崩の予測はできないのです。とはいえ、この気象条件なら今日のあの斜面はやばいよね、という感覚はあります。実際、行ってみると目当ての斜面が、すぱーん。ということも。

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ウィーンでは、そんなに降らないし雪崩ることはないので、単に大好きな雪の観察です。まず、プレートが室温ですので雪の上に置いて温度を下げます。表面に溶けた雪で水滴ができると、それが呼び水となっていつまでも雪がつかないので適度にティッシュなどで吹きます。そして雪がとけなくなったところで、ブラシで雪をはたき落として観察開始。

雪面の温度は赤外線温度計では、-1.1±0.2℃でした。差し込んだ方の温度計は-2.5℃程度まで下がっていました。実際に雪深い山の中で雪の層の温度を測定すると、−5℃や−15℃といった温度が測定できるんです。不思議なことにその雪が降った時の温度がそのまま雪の中にパックされるんですね。そして温度の異なる層の境界で雪の結晶状態に変化が起こったりします。不思議でしょう?

そして深さを縦軸に、温度を横軸にプロットするとこんな図になります(借り物)。それぞれどこで切れ(雪崩)やすいか、その層での雪はどんな結晶状態であるかが重要なのです。

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雪山に行って、ピットを掘りたいよぉ・・・。

滑るよりも、ピットを掘って、日がな一日雪の観察をしていたいタイプでした。山の中に取り残されると悲しいから、みんなと一緒に滑るけど。

それで、残念ながら、昨日のウィーンの雪は雲粒がいっぱいくっついたものばかりで、写真に残せるような結晶はほぼみつかりませんでした。ベランダで20分ほど頑張っていたのですが。

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今日、土曜日は、朝から気温が高くべちゃべちゃの雪が降っていました。雪のウィーンを眺められるところに行こうと思い、バスに乗って少しだけお散歩に行きました。

ある気象サイトが「Southern Germany, Austria to receive worst of European snowstorm」という記事を出していたので、もっとすごいかと思いましたが降雪の中心はウィーンよりかなり西側と山岳部のようでした。というより、ウィーンが東寄りすぎるのでしょうか。Munichは100以上のフライトがキャンセルされたようです。

雪の結晶の形状が天空を舞っている間の条件によって決定されることを実験室で明らかにし、「雪は天からの手紙」で有名な、中谷ダイヤグラムの中谷宇吉郎よりも30年も前に、同じようなことを既に発見し、中谷のことばの原型となる言葉を残していた人がアメリカにいました。

“A hieroglyph from the heavens”

 

ウィーンの雪は、止みました。溜まっているやらなくてはいけないことが鬼のようにあります。時間を有効に使わなくちゃ。明日は完全引きこもりです。

 

 

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