これまでの経験から、ハイキング・登山を始める前の準備や注意事項についてまとめてみました。(最終更新:2026年7月)
事前準備
マダニ媒介脳炎ワクチンを打っておこう
ヨーロッパの東側では、マダニ(Zecken)媒介の脳炎の可能性があります。発症すると、数%の確率で死に至る可能性があります。私も知らずに渡航し、こちらに来てから接種しましたが、抗体の定着には少なくとも2−3週あけて2回打つ必要があります。そして1年後などにブースター接種が必要です。こちらでは、1回あたり、25−30ユーロ程度でできたと記憶しています。
(厚生労働省) ダニ媒介脳炎について
(在オーストリア日本国大使館) ダニ脳炎に対する注意喚起
マダニがいるのは標高の低い場所
活動時期は流行期は春から秋。生息場所は、フランス以東、イタリア以北、北欧以南のヨーロッパ全般の高度800m~1000m以下の落葉樹林帯地域。とされており、標高の高い場所での可能性は低いようですが、ハイキング以外のアウトドアアクティビティ(草原を歩く、草むらに座る、川辺で釣りをする等)でも十分に可能性があります。
マダニ媒介脳炎の可能性は低くない
可能性は低いのでは?と思うかもしれません。甘くみるなかれ。2023年6月初旬現在、既にオーストリア国内でワクチン未接種者の発症が報告されています。
(heute.at) FSME-Alarm – Karte zeigt, wo Zeckengefahr am größten ist – Gesundheit
虫除けスプレーで対策しよう

もちろん、完璧な対策ではないかもしれませんが、こちらのスプレーには蚊だけでなくマダニもプリントされていることがあります。
ワクチン未接種の場合は、スプレーをしっかり塗りたくる(スプレーを軽くするだけではダメで隙間なく塗る必要があります。)
肌をできる限り出さないのも対策ですが、夏のこちらの登山やハイキングでは皆さんかなりの軽装ですので、着込んでいると変な感じで目立ちます。
装備
山用品の買い物
オーストリアのどこでも見つけられるIntersport、Hervis、(あまりお勧めしないSportsDirect、XXL Sports & Outdoor)があちこちに大きな店舗を構えています。ウィーンの街中にも何箇所もありますので車は必要ありません。あとは私がフランスのMontBellと呼ぶDecathlonもウィーン近郊に2店舗の大型店があります。そのほかはローカルな登山用品店は多いですがいちいち挙げていたらキリがないのでこれは除外して別記事にしたいと思います。普通のものであれば、ウィーンの街中に数カ所あるIntersportかHervisで十分に揃えられるかと思います。Intersportは、スキー場のゴンドラ乗り場などにもあり、そこではスキーレンタルなんかもやってます。
コースを計画する
オーストリアに来た直後の車がない頃の四苦八苦と、車購入後のトライアル&エラー。色々なことを試してきました。一番初めの壁は、自分のレベルに合ったハイキングコースを見つけることでした。そんなコツを残しておきましょう。
ハイキングコースのガイド本を使う(ウィーンの森)
Stadtwanderwege以外にも、ウィーンの森(Winerwald)には死ぬほどハイキングコースが張り巡らされています。もう全て歩くのは不可能なレベルです。場所によっては自転車(マウンテンバイク)も走れます。
そんなのウィーンの森(Winerwald)おすすめハイキングコースの地図は、一般の本屋さんにたくさん売られています。当然ドイツ語で書かれていますが、最低限の必要情報は把握できると思います。ウィーンの森に関しては、私のおすすめは、真ん中の2冊です。お子さんがいらしたり、軽いハイキングからはじめてウィーンの森を制覇したい私のような変態には、右からふたつ目の緑の本「WANDERATLAS Winerwald」が一番良いです。
左からふたつ目の「Leichte Wanderrungen(軽ハイキング)」もおすすめですが、Leichte=Lightとあるのに上級コースも載っているのがオーストリアらしいです。

それぞれの本で、カバーする範囲が少し違ったりと特徴があります。優しめ(青)、中くらい(赤)、上級(黒)に分かれています。短くても標高が低くても梯子場、鎖場があると上級(黒)になっています。苦手な人は避けるかバリエーションを探しましょう。いずれの本も、始点と終点が書いてありますので、駅名があれば公共交通機関でアクセスが可能ということです。

ちなみに、中古ではなくできるだけ最新版を買いましょう。時々、土砂崩れなどで登山道が消え失せています。
ハイキングコースのガイド本を使う(ウィーン日帰り圏)
ウィーンの森よりも少し外側、ウィーン近郊の山々(Wiener Hausberge)の場合は以下の2冊がおすすめです。KOMPASSの方は、専用の地図アプリもありますし、持ち歩ける地形図もついてきますのでこのデジタル時代にコンパスと高度計でGPSに頼らずアナログに歩くことを好む私のような変態にもおすすめできます。
Mit Bahn und Busの方は、その名の通り電車とバスで行けるウィーン近郊の山々のガイドです。

当然、このほか、各地域ごとにあらゆる地図が売られていますので、とっかかりとしておすすめしたいと思います。(←いまだに私はネット情報だけでは動きません。特に山に関する情報は。)
現地で地図を拾う
他に参考になるのが、現地で拾う地図。たいていの観光地のホテルにはこのような自転車やハイキング、スキー場の地図が置いてあります。毎度、あちこちで拾ってきて溜め込むのが私の趣味です。標準的なルートが載っているし持って歩けるし無料だしレストランの宣伝広告とか地元ならではな情報もあったりでおすすめです。

Komoot、Bergfex、KOMPASSなどのアプリを使う
オーストリアでのアウトドアで有用なアプリを別記事にまとめてみました。
注意事項
オーストリアでテン泊・Wild Campingは(ほぼ)禁止
東欧・北欧・スペインなど一部を除いて、ドイツ、オーストリア、イタリア、スイスなどオーストリア周辺国では、テン泊はできません。そのかわり、オーストリアでは山にはたくさんの山小屋があり、山小屋を繋いでの縦走が可能です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
テントを張ってキャンプをしたければ、麓にあるキャンプサイトに行きましょう。山での無許可のテント泊は、多額の罰金を取られることもあります。オーストリアは特にルールが複雑で、州によっては森林限界より上では可能などありますが、「森林限界って何?」というような人は、まず山でテン泊やキャンプをしようと思わないでください。
(bergzeit) Wild camping in Europe: where it’s allowed and where not
登山道に牛がいる(夏)

夏の間、多くの登山道には牛がいます。大抵、放牧されているのは乳牛、つまり雌牛(Cow)です。雄牛(Bull)と違って通常は大人しく襲ってきたりはしませんが、大きいので私は結構怖いです。登山道にいる場合は、登山道を外れても良いのでうまく避けて歩きましょう。
また、犬を連れてハイキングに行き、牛の群れの中を通過する際には犬の行動に特別な注意を払いましょう。例年、犬が過激に反応したことをきっかけに牛に襲われる事故が発生しています。普段はおとなしいですが、どんな動物も子育て時期には子供を守るために非常に敏感です。
その他注意すべき野生動物
オーストリアには熊はいないと思われがちですが、イタリア・スロベニア国境の山々には熊が生息しています。日本と同様に、里に降りてきて家畜を襲ったり農作物に被害が出たりしています。
また、ザルツブルク州周辺では狼の生息数の増加が報告されていて、こちらも家畜への被害などがニュースになっています。今の所、人的被害のニュースはみたことがありませんが、気をつけましょう。
生息域の詳細は以下のページを参照ください。
Bear, Lynx, Wolf distribution map:https://baer-wolf-luchs.at/verbreitungskarten/baer-verbreitung
道標を確認すること


オーストリアの山のメインの登山道はよく整備されています。要所要所に所要時間と方向を示した黄色い看板があり、概ねの目的地と所要時間が書かれています。携帯があるから大丈夫と思っていても、携帯をなくすこともあり得ます。目指す山頂の名前やヒュッテ、出発地点の名称くらいは認識しておきましょう。
また、森林限界を越えた場所や岩場では、赤白赤や青白青、黄色白黄色のカラーペイントがされています。踏み跡が不明瞭な場所ではこのペイントに沿って歩きましょう。時々、このペイントの間に数字が書いてあることがありますが、それはトレイルの番号です。
登山道の難易度に注意
登山道の分岐には必ず以下の写真のような黄色の道標があります。向かう方角の脇に赤や🔴黒の⚫️丸が記載されています。初級者は決して黒丸⚫️の方向には行かないようにしてください。上級コースであり、クライミングギアが必要な崖やかなりの高度感がある危険箇所を通過するというサインです。

オーストリアの山岳会の解説を簡単に日本語訳すると(※必ず原文参照のこと)以下のような感じになります。
| 🔵青丸 | – 比較的平坦で、狭い道であることもある |
| 🔴赤丸 | – 狭く急勾配が多いため、転倒の危険性がある区間があることがある – 短い区間だがロープなどで確保された区間が発生する可能性がある |
| ⚫️黒丸 | – 狭く、しばしば急勾配で、墜落の危険 – 頻繁にロープなどで確保された区間や、手の使用、簡単なクライミングセクションがある – 歩きの確かさと高所へ恐怖感の克服が不可欠 |
不用意に危険箇所には入り込んで救助を呼ぶ羽目にならないよう、実際の様子はこちらを見てみてください。
以下はチロル州での例です。

公共交通機関でのアクセス
言わずもがな、時刻表は確認しておきましょう。Google Mapは田舎に行くほど当てになりません。頑張ってローカルバスのサイトを探し出してタイムテーブルを確認しましょう。(何度猛ダッシュしたか・・・)
車でのアクセス:駐車場を見つけておく



たいていの登山口やハイキングのスタート地点には駐車場があります。Google MapのSatellite ViewやStreet Viewで確認してみましょう。入れなければ、住宅街の普通の道路沿いの駐車スペースに停めるしかない場合もあります。ウィーン市内は日曜日なら無料ですが、駐車の可否や料金はしっかり確認しましょう。
車でのアクセス:駐車場の料金を確認する
駐車料金が必要な駐車場では、よくあるのが以下のような券売機です。駐車時間などを選択して表示された料金を支払い、出てきたシートを車のダッシュボードの見える位置に置いておきます。大抵の場合はカードが使えます。+やーのキーで駐車時間を変更して、✅を押して確定、表示された金額を支払うというシンプルなインターフェースがほとんどです。


それ以外にも、登山道に入っていくところに車用のゲートがあり、支払う場合もあります。

登山口にトイレはない
スキー場の駐車場などが登山口になっていない限り、登山口にはトイレはほぼありません。トイレは駅やガソリンスタンド、サービスエリアで済ませて登山口に行きましょう。日本のように簡易トイレがあるようなことは、ほぼありません。
山での挨拶(ちゃんと挨拶しましょう)
日本と同じです。山ではあった人とご挨拶しましょう。HalloまたはGrüss Gottで十分ですが、それ以外によく聞こえるのがGriaß di。言語能力の低い私には「クリスティ」に聞こえて、長らく何語?!?となっていたのですが、オーストリア人に聞くと「もしかしてGriaß di?」と言われ、それっぽいです。別れ際には、Ciao、Tschüssも使います。
それから、どこからみてもアジア人の私にもドイツ語でガンガン話しかけてくれます。とっても人懐っこい人も多いので話してみましょう。「英語でお願い〜」というと切り替えてくれる人がほとんど。
また、ウィーンを離れると、いろんな言語で挨拶されます。ハンガリー語、スロべキア語、よくわからない言語もたくさん聞こえてきます。
(tyrol.com) The Tirol Dictionary: The Essential Guide for Beginners
山でお湯を沸かさない(火気厳禁)
日本人の感覚では、山頂に到着したらお湯を沸かしてカップ麺でも〜♪となるところですが、多くのヨーロッパの山はWild Campingも火気も厳禁です。タバコすら怪しいのではないでしょうか。山小屋以外でタバコを吸っている人は見たことがありません。
山頂に到着
山頂には大抵、十字架があります。十字架や山小屋にはエーデルワイスが飾られていることが多いです。日本と同じ。混雑している山頂では皆で気配りしあって写真を撮りましょう。

イラクサに注意
見た目が大葉とか紫蘇っぽくて、日本人はつい触ってみたくなる植物がありますが、これ猛毒。イラクサの葉や茎に触れると、目には見えない細かい棘(刺毛)が刺さって激しい痛み、赤み、腫れなどを引き起こします。人によっては火傷したみたいな感じという表現をする人もいます。決して食い意地をはらないように(煮て食べたら毒成分がなくなり美味しいらしいけど、どうやって収穫するんだろう。)
登山道の難易度表記(さらに詳細)
ここはハイキングを超えた本格的登山に取り組む人だけお読みください。登山道の難易度は、前述の道標での色分けのほかに明確なレベル分けがなされています。しかも国(スイス・オーストリア)や、オーストリアの中でも州によってこの色分けが異なるというトラップがあります。とにかくスイスやオーストリアの西の方で青を見かけたら注意してください。

さらに、日本と違うのは登山道のテクニカルレベルがT1からT6まで明確にランク分けされていることです。これはスイスの山岳会によるカテゴリ分けでSAC Hiking Scaleと呼ばれ、ドイツ語圏で共通であるようです。
”The SAC Hiking Scale is the standard in all German speaking countries denoting the difficulty of all paths, hiking ways and trails. Developed by the Swiss Alpine Club, it takes surface, gradients, exposure, experience and gear required, and safety precautions into account.”
原文:https://www.sac-cas.ch/fileadmin/Ausbildung_und_Sicherheit/Sicher_unterwegs/Sicher_unterwegs_Wandern/2020_Berg_Alpinwanderskala_EN.pdf
表の出所:https://www.bergfreunde.eu/alpine-grades-calculator/
| Level | Path | Terrain | Requirements |
|---|---|---|---|
| T1 Hiking | Well developed, signposted and marked. Somewhat exposed places very well secured. | Flat or slightly inclined. No danger of falling with appropriate behaviour. | No steady footing necessary. Can be walked in trainers. Navigation without a map possible. |
| T2 Mountain hiking | Continuous route and passage marking. | Steep in parts. Danger of falling not excluded. | Some steady footing Trekking shoes recommended. Basic navigation skills. |
| T3 Challenging mountain hiking | A footpath is usually available. Exposed places mostly secured with ropes or chains. | Partially exposed areas with danger of falling, gravel plains, pathless steep terrain. | Good steady footing Good trekking shoes. Average navigation skills. Basic Alpine experience. |
| T4 Alpine walking | Path not necessarily available. Sometimes need to use hands to keep going. | Mostly exposed. Tricky grass heaps, rocky slopes, simple firn fields and snow covered glacier passages. | Familiarity in exposed terrain. Stable trekking shoes. Terrain assessment and good navigation skills. Alpine experience. |
| T5 Challenging Alpine walking | Often without a path. Individual, simple climbing sections. | Exposed. Challenging terrain, steep rocky slopes, snow covered glaciers and firn fields with danger of slipping. | Mountaineering boots. Secure terrain assessment and very good navigation skills. Good Alpine experience also in high Alpine terrain. Elementary knowledge in handling a pickaxe and rope. |
| T6 Difficult Alpine walking | Mostly without a path and unmarked. Climbing sections up to II. | Often very exposed. Tricky rocky slopes, snow covered glaciers with increased danger of slipping. | Excellent navigation skills. Proven alpine experience and familiarity with alpine equipment. |
これがどこに出てくるかというと、困ったことにほとんどの地形図はこれを表記しません。OpenStreetMapをサポートしているアプリなら表示されると思いますが、残念なことにこのような地図レイヤは課金しないと表示できなかったりします。以下はKomootの画面ですが、多分、Sport-specific mapsでHikingを選ぶと表示されるのではないかと思います。

以上、逐次、気づいた点を追加していきたいと思います。

